『天気の子』:マスとアートの擦り合わせ

映画随想録

興行収入250億円を突破した『君の名は』の新海誠監督、次回作

『天気の子』

どうしたって、この頭文句がついて回る、凄まじいプレッシャーの元

試写会0、公開2週間前でも編集続行、大手スポンサー集結で

ついに公開日を迎えた。

早速、堪能してきた。

以下、ネタバレなしの感想列挙。

・結論。『君の名は』に及ばずとも、十分に良作

・ラストで、かなり持ち直して、いい映画的興奮・満足感を味わえる

・音楽、絵、演技が合わさる、映画的興奮を味わえると心地よい

 (特に、RADWIMPSの音楽の力は、やっぱり絶大)

・小栗旬、かなり良い味を出している。「藤原啓治」風で(絶対意識しているはず)

・本田翼も、そこまで気にならない(前作の長澤まさみとの差は歴然だが)

・主演の子供2人は、かなり頑張っている。好印象

・作り手は、『エウレカセブン』(初期)を確実に意識したはず。良い意味で

 (エウレカセブンの藤原啓治(ホランド)と、天気の子の小栗旬の立ち位置が、極めて近い)

・主要人物の背景を特殊にすると、やはり感情移入しずらくなる

 (もちろん、年齢の差が絶対的にあるのだが)

・『当たり前は更新されていく』という点は、同感

・『我を通す覚悟』も、良い

・鑑賞後、ビッグマックとチキンラーメンが食べたくなる

 (まんまと、戦略にハマってしまう)

・鑑賞後、天気が晴れていると、ちょっと嬉しくなる

この映画は、250億という前作の興行収入記録を、

あわよくば塗り替えよう、という目標を掲げている映画だ。

つまり、日本では近年稀に見る、

高い目標設定をしたコンテンツ・ビジネスと言っていい。

志の高さと、制作サイドの苦心が随所に感じられた。

「Boy Meets Girl」「『世界』か『個』か」という王道を行きながら、

監督の個性・価値観・アート性も、ラストにしっかり出している。

個人的には、良いラストの展開だったと思う。

一方で、子供から大人まで、大勢に見てもらいたい「マス向け」にするために…

① 1時間54分という、上映時間の短さ

 (通例、2時間以内の方が観客を呼びやすい)

 (その意味で、3時間の大作にしても世界歴代1位をもうすぐ記録する

  『Avengers: Endgame』の異常性を再認識できる)

② モノローグ、説明セリフの多さ

 (映画を観慣れていない大人や、理解力に乏しい子供に楽しませるために)

この2点は、明らかに、制作サイドは「マス向け」にするために、妥協している。

①の上映時間を切り詰めるために、ドタバタした印象が強い。

「急ぎ足で、つなぎが悪いな」と感じる箇所が少なからずある。

音楽で言うところの、十分な間奏タイムが、本当はもっと欲しかった。

このストーリーであれば、2時間10分を少し超えてもよかった。

その分、主人公の周りのキャラの描写をじっくり描いてほしかった。

②の説明セリフは、冒頭から、さっそく嫌な感覚を抱いた。

とにかく、最初から最後まで、心情描写を説明してしまってくれる。

しかし、①・②いずれも

マス(大衆)向けにするためには、避けられない部分でもある。

だから、簡単に批判はしたくない。

大きく、高い目標を目指すビジネスのための弊害だ。

監督、制作サイドは、そんなことは分かったうえで

マスとアートを擦り合わせて、映画を創っている。

物足りなさや、不満な点もあるが、

傑作だとは思わないが、

十分に満足できる良作ではあった。

興行収入、100億円はいくと思う。

しかし、200億円はいかないと思う。

というのが、感覚的な感想になる。

リピーターが、前作ほど現れるとは思えないからだ。

まぁ、数字がすべてではない。

(細田に比べれば)新海監督のポテンシャルは、まだまだ感じられた。

次の、新海誠のチャレンジが楽しみだ。

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