『Avengers:Endgame』を観に行ってみてほしい。
あるいは、エンドロールを観ている観客のリアクションの動画を検索してみてほしい。
(キーワード検索:avengers endgame audience reaction)
オーディエンスは、「映画と観客」という関係を明らかに飛び越えて、熱狂している。
親しい先輩や、リスペクトしている知人が、
仕事を全うした姿に、感謝と感動、惜別の拍手を送っているようなのだ。
10年間楽しませてもらったプロフェッショナルぶりに
ただただ「ありがとう!」と、涙を流しながら笑って歓声を贈っているのだ。
特に、Ironman=Robert Downey Jr.への熱狂ぶりは凄かった。
どう考えても、「企業と消費者」の関係ではない。

日本国内のコンテンツにも、同じような友人関係を結んだ
(熱狂というよりは、穏やかで、円熟しきった関係だが)
企業/コンテンツ/プロダクトと、顧客の姿を見ることができる。
北海道の地方局HBCが生みだした、バラエティ番組『水曜どうでしょう』だ。
まだ大学生だった頃に抜擢された大泉洋、
その北海道での所属事務所の社長、鈴井貴之(ミスター)、
そして、2人のディレクター(ヒゲとうれしー)。
この4人の生みだすバラエティ番組は、強烈な個性と、後味を発揮し
1996年~2002年のレギュラー放送と、
その後に数年スパンで放送される新作シリーズは、
DVDが出るたびに10万本がコンスタントに売れる、
「日本一売れるバラエティ」になっている。
こちらでも、作り手と観客は、明らかに「企業と消費者」ではない。
観客は、「どうでしょう軍団」、「軍団員」と番組内で(勝手に)呼ばれる。
番組内の言葉を借りれば、「本隊と軍団員」で
同じコミュニティの一員のようになっている。
「水曜どうでしょう祭」には、4万7,000人のファンが押し寄せた。

「顧客をどのように考えるか」
「顧客とどう繋がるか」
現代における、このビジネスの問いに対する最適解は
「友人になる」だ。
それを実践する中国メガベンチャーが、シャオミ(小米科技/Xiaomi)である。
サムスン、ファーウェイ、アップルに次ぐ世界第4位のスマートフォン・メーカー
シャオミの、成長における最重要コンセプトは、「ユーザーと友人になる」だ。
ユーザーと友人関係を結ぶことで、
ユーザー参加型の製品開発から優れた製品を生みだし、
優れた製品の評判をクチコミで広めてもらう。
この一見、理想論に思えるようなプロセスを実現し、
驚異的な成長を達成しているからこそ
シャオミは世界中からベンチマーク対象として注目を集めている。
ある企業は、ユーザーの前にひざまずき、ユーザーを神のように考える。
(日本のサービス業に典型的に浸透している)
またある企業は、反対に、ユーザーをひざまずかせ、
ユーザーを素人扱いして洗脳しようとする。
(上から目線の、AppleやGoogleはこちら)
シャオミは、こうした二極的な従来のユーザーとの結びつき方では
企業とユーザーはお金でしか結ばれない、と考える。
だから、友人関係を、全ての戦略の前提条件にしている。
同社では、友人と話すように、全社員がカスタマーサービスを担当する。
企業と消費者の「友人関係」は、
決して、だらしない姿を見せあうような関係ではない。
清らかな緊張関係を大切にし、互いに認め合える。
仲を深めたいからこそ、良いところを見せようとするし、気配りもする。
衝突や失敗をしたときには誠意をもって謝罪し、すぐに仲直りをする。
どちらかが上に立ち、下のものを屈服させるような関係は
現代には適切でない。
不満の声を封殺できる時代ではないため
もはや長続きさせることはできない。
上下関係は、1人のユーザーの声や、1人の元社員の告発によって
たやすく崩れ去る。
企業と顧客がWIN-WINの関係にある友人となっていてこそ、
ビジネスにおける理想を追求することができる。
これは、教育現場における「教員と生徒」にも、まったく同じことが当てはまる。
企業と消費者の、適切な友人関係は、この言葉を言えれば成り立つ。
「あなたは、自社のプロダクトを、
正規料金を請求したうえで
自信をもって友人に売ることができるか」
マーベル、MCU、『Avengers:Endgame』は、それができる。
『水曜どうでしょう』も、それができる。
シャオミも、それができる。
あなたのビジネスは、それができるかどうか。
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