『SPIDER-MAN Far From Home』:すぐに、もう一度観たくなる

映画随想録

私は熱狂的なマーベル・ファンとは、とても言えないが

(マーベル・ファンは、世界に果てしなく存在する)

映画好きであり、MCU好きでは、ある。

もともとはアメコミ好きでもなんでもなかった。

サム・ライミ版の『スパイダーマン』は、陰鬱としていて

主演の2人に華がなく、応援する気にもなれず、カスりもしなかった。

だから、リブート版の『アメイジング・スパイダーマン』2作は観てすらいない。

(『500 days of summer』の監督なのに…

 1作目の評価がボロボロだったことも、

 スパイダーマンに対する諦めを加速させた)

それを一変をさせたのが、『IRONMAN』=Robert Downey Jr.の登場だ。

Tony Starkの魅力に、コロッとやられた。

10年前のIRONMANから始まるMarvel Cinematic Universeは、

Marvelが、自社コミックを、理想的に映画化するために

わざわざ自前の映画スタジオを立ち上げたことによって

ヒーロー映画に、演技派・個性派の役者を抜擢し、

アクションとドラマ、ユーモアとシリアス、ポップさと迫力の

バランス感覚に優れたエンターテインメント演出で、

「映画好き」がこれまで敬遠し、距離を置いてきた「ヒーロー映画」に

多くの「映画好き」を引き込み、虜にして、夢中にさせた。

私も、そのひとりである。

だから、10年間、21作を積み上げて

満を持してつくられた『AVENGERS ENDGAME』には、感無量だった。

「映画好き」として、展開にツッコむことも、欠点を探すこともできるのだろうが

「そんなことは、ヤボだ」の一言で片づけ

ただただ楽しみ、味わい、

キャップの覚醒シーンからは涙が止まらなかった。

映画を何百、あるいは千単位で観てきて

感動・哀しみ・感謝が入り混じった涙を流したのは、

ENDGAMEが初めてだった。

エンドロールの涙は、明らかに、映画と観客という関係を越えていた。

MCUは、作品のクオリティに加えて

製作陣・キャスト陣のプロフェッショナルぶりが、

世界の他のどのコンテンツ・ビジネスと比べても、飛び抜けて高い。

Marvel Studioは、キャストだけでなく、監督や脚本家に関しても

過去の実績だけでなく、ヒトとスキルで評価し、

前例にない大抜擢を重ねてきた。

映画ビジネスは、博打に近いことで有名で

1本ヒットさせることだけでも、至難の業である。

それを、規模の大小はあれど、10年、22作ヒットさせ続けるなどということは

まさしく奇跡に他ならない。

また、製作陣は

「キャストこそが1番キャラクターを理解している」と信頼し

製作陣とキャストが、常に話し合いながら撮影していくスタイルを確立している。

(『IRONMAN』1作目から、Tony Starkはアドリブだらけ)

(「I am Ironman」も「I love you 3,000」も、Robert Downey Jr.が提案)

コンテンツ・ビジネス、グッズ展開、アパレル展開も巧みだし

映画的興奮を高める事前の情報統制の徹底ぶりも素晴らしいし

映画とドラマ・シリーズの連動性も、実に豊かで、緻密だ。

特に感心しているのが、キャスト陣の演技以外の振る舞いだ。

MCUの主要キャストの数は、凄まじい人数に及ぶが

誰ひとり、スキャンダルや不用意な発言・行動を犯さない。

(トムホとラファロの情報漏洩癖は、ご愛敬)

(ジェームズガンの監督降板・復帰騒動は、

 むしろGOGチームの結束力に感動した)

キャンペーン、バラエティ、ファンサービス、チャリティ、SNS、

あらゆる活動において、Robert Downey Jr.が模範となることで

キャスト陣全員の共通認識として、

映画の作り手・広め手としてのプロフェッショナリズムが徹底されている。

(だから、彼はMCUの「God Father」と呼ばれ、リスペクトされている)

だから、いろいろな意味で、MCU22作品

そしてENDGAMEという映画コンテンツは

奇跡的で、感動的で、本当に有り難いプロダクトなのである。

そして、そのENDGAMEの後日談となり、

MCUのフェーズ3の締めくくりとなるのが、

『SPIDER-MAN Far From Home』だ。

『CAPTAIN AMERICA Civil War』での登場から

『SPIDER-MAN Homecoming』、

そして『AVENGERS Infinity War』『AVENGERS Endgame』

と、重ねられてきたアイアンマンとスパイダーマンの師弟関係・親子関係は

本当に素晴らしく、ワクワクし、ずっと見守りたかった。

Robert Downey Jr.は言うまでもなく

大抜擢されたTom Hollandが、本当に最高で

16歳の高校生で、明るく、ポップで、ユーモアがあって、応援したくなる

こんな「Peter Parker」が見たかったんだ!

こんな「SPIDER-MAN」を待ってたんだ!

と、叫びたくなるキャスティングと演技だった。

MJも、キャラがガラッと変わり、

ディズニー常連のZendayaが、うまく収まっている。

PeterとMJ(そしてNed)の相性が抜群だ。

また、このご時世を反映して、多様性を詰め込んだような

ハイスクールの面々も、すごく好みだった。

ちなみに

『SPIDER-MAN Homecoming』では、

スパイダーマンに欠かせない「父性の死」が抜け落ちていると

よく批判されていたが、それは『ENDGAME』で用意されていた。

『ENDGAME』では、ヒーロー以外の市民の存在が抜け落ちていると

批判があったが、それは『SPIDER-MAN Far From Home』で用意されている。

MCUは、作品単体での構成と、シリーズ全体での構成を

本当によく練り上げて、Story Telingをしている。素晴らしい。

https://www.youtube.com/watch?v=JDE7Mlks1PU

ようやく本題。

ただし、ネタばれしないよう注意して、箇条書きにて。

・個人的には、作品単体としての完成度はHomecoming

・でも、シリーズとしての味わい深さは、Far From Home

・アクションが抜群に良い

・イタリア語の「Boh」を使いたくなる

・Peter、Ned 、MJ、大好き

・『The Nice Guys』の子役の登場が増えてて、嬉しい

・相変わらず、演技派・個性派のキャスティングがハマってる

・今回の「怖い大人」も、いい塩梅

・師を超える必要なんてない、師と同じ方向を見て、自分なりに走っていけばいい

・Happyがいてくれて良かった

・Happyの選曲と顔が、たまらない

・出てくるテクノロジーは、決して夢物語・他人事では、もはやないのが面白い

・ふざけるなよ「JJJ」

・「What’s the fu…!!」最高

・『CAPTAIN MARVEL』好きにも、たまらない

・SPIDER-MANは、まだまだ成長過程。それが良い!

・だから、早く続編を…‼

・Tom Hollandが23歳、Zendayaが22歳。高校生に見えるうちに、急いで続編を…‼

個人的には、宇宙や魔法の話よりも

IRONMAN3部作のように、人と人、ガジェットDIYの話が好みだ。

ENDGAMEであそこまで広がってしまった話を

「親愛なる隣人」のスパイダーマンだからこそ、

人と人の話に揺り戻すことができた。

「ENDGAME後の、デザートのような映画」として、満点に近い満足度。

実は、ENDGAMEは、初見の感動が宝物すぎて…一度しか観に行かなかった。

SPIDER-MANは、鑑賞後、すぐにでも

もう一度観たくなった。

安心して、

ポップで、ほほえましく、それでありながら迫力満点、

メリハリ利いたドラマの中にいる

愛嬌たっぷりのPeterとMJをまた観に行きたい。

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