ビジネス、マーケティングを進めていくうえで
判断基準、意思決定基準となるものは、
データか直観だ。
それは、事実かフィーリング、
左脳か右脳、
サイエンスかアート、などと言い換えられる。
要は、しっかりリサーチをして、データで裏付けしていくか
経験・感覚・勘を頼りにしていくか、の2つである。
多くの経営者やビジネスパーソンが、
現在でも、後者:アートの重要性を明言している。
その一方で、「Big Data」の名のもとに、
前者:サイエンスの重要性は急速に高まっていっている。

創業から20年で「世界最大の放送局」に昇りつめた
アメリカのメガベンチャー、NETFLIXは
スマホ・タブレット・PC・テレビにインストールされたアプリから
利用者の個人属性、検索方法、視聴コンテンツ・手段・時間帯、
どのシーンや人物を早送りしているかまで、
膨大な顧客データを収集・蓄積・分析して
「次は、どのようなオリジナル・コンテンツを制作するか」
「その内容に最適な監督と俳優は誰か」
「潜在的な視聴者の数と層はどうなるか」
などを具体的に割り出して、制作・配信を行っている。
完璧なサイエンス主義の企業であり、それで成功を収めてきた。
同様に、P&Gや資生堂もサイエンス主義でよく知られている。

ビジネス以上に、と言っても過言ではないくらい
スポーツの世界でも、サイエンス重視は進んでいる。
Roger Federerは、ケガから復帰した2017年から
Golden Set Analytics社と契約し、通常の2倍以上のお金を支払って
自分と対戦相手の、精密なテニス・データの解析を行っている。
自分と相手が
無意識にどんな組み立てをしているのか、
どういう場面で、どういうショットを打たれると弱いのか、
どんなコースに、どんな球種のサービスを打つと効果的なのか、
テニスにおける戦略を解き明かし、試合に臨んでいる。
試合中、常にデータに従うとは限らないが
データと直観を組み合わせながら、使い分けながら、戦っている。
テニス選手の中でも、フェデラー、ナダル、ジョコビッチの「BIG 3」は
特に資金をかけて、データ解析を重要視しており、
試合前には、対戦相手を丸裸にしている。
若手のズべレフもやっているし、
女子の現1位のバーディも、10年以上やっているという。
(錦織は、コレにどれくらい取り組んでいるのだろうか…)

メジャーリーグの「フライボール革命」も、まさしくサイエンス主義の産物だ。
打球速度と、打球角度の関係に注目したフライボール理論では、
打球速度98マイル(158キロ)、打球角度26~30度のとき
最も安打になる確率が高いことが明らかにされた。
つまり、アッパースイングが効果的ということになる。
実際に、フライボール理論を採用したチームが優勝し、
採用した打者が最多安打を記録したことで、
メジャーリーグでは通説化しつつある。
サイエンスの解析を進めることは、アートの解明につながり
属人的なスキルやセンスを、一般化することができるようになる。
分かりやすく言えば、イチローや大谷のような「天才」を
どうすれば生みだせるのか、解明し、必要な要素を導き出して
第二のイチロー、第二の大谷を育成していくことを目指す。
そう考えてみれば、サイエンスを進める意義の大きさが分かるだろう。

ただし、イチローは警鐘を鳴らしていた。
「コンピューターによって、馬鹿でも野球ができるようになってきた。
でも、それでも、馬鹿は野球に向きませんから」
スポーツでも、ビジネスでも
理想は、サイエンスとアートの共存だ。
「サイエンスとアートの使い分け」
「サイエンスに裏付けられたアート」
「アートを解き明かすサイエンス」
2つとも大事にするのが、ベストである。
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