ポテンシャルを信じる:自分の可能性、相手の可能性

マーケティング小話

メジャーリーグ、エンゼルスの大谷翔平選手は、

2013年に日本ハム・ファイターズへ入団。

2014年には、日本球界初の二桁勝利・二桁本塁打を達成

2015年には、投手として最多勝・最高勝率・最優秀防御率の3冠

2016年は、チームのリーグ優勝・日本一、リーグMVPに輝いた。

2017年はケガで調整メインの年となったが

2018年にメジャーへ移籍すると、投げては4勝2敗

打っては、打率.285、盗塁10、ホームラン22本、打点61、OPS.925で

日本人選手としてイチロー選手以来となる、新人王を獲得した。

2019年、ひじの手術のリハビリで遅れたが、ここまで

打率.272、盗塁3、ホームラン9本、打点30、OPS.827と調子を上げてきている。

大多数の偏見を打ち破り、メジャーリーグでも進化を続けていく大谷だが

その彼でさえ、メジャー1年目のオープン戦で

投打不振に陥ったときには、心が揺れたという。

そのとき、彼は、バットを1本持ち、助言を求めて

イチローの自宅に向かった。

技術指導と共に、イチローからもらった次の言葉で

大谷は、不振の呪縛から解き放たれた。

自分の才能や、やってきたこと、ポテンシャルを、もっと信じた方が良い

このイチローが大谷に贈った言葉は

スポーツ、野球、天才、にだけ当てはまる話ではない。

挑戦を続ける人に、広く当てはまる話のはずである。

挑戦に迷い、それでも更なる一歩を踏み出そうとする人の

背中を押してくれる言葉になるはずだ。

イチローと大谷の関係は、ビジネスでも見つけることができる。

2011年に創業されたロボット・ベンチャーのMUJINは、

「ロボットの知能化が世界を変える」と掲げ

産業用ロボットの自動化を実現させることで、急成長を遂げている。

だが、創業当初は、自社製品も販路もないゼロからのスタートだった。

日本国内で営業を試みるも、実績がないと相手にされず、

アメリカに渡って日系企業の現地支社を回った。

同じ日系企業でも、日本よりもアメリカの現地支社の方が

新しく面白い技術に対して門戸を開いてくれやすいと感じたためだった。

その後、アメリカから日本へ話を通してもらう形で

少しずつ道が開けていくこととなる。

ただし、技術とコンセプトだけで、

ロボットに合わせたオペレーション・ソフトウェアの現物が手元にあるわけではない。

減点評価を自分ですれば(相手にされれば)、

「あれがない」「これもない」と価値は見つけられない状態には変わりなかった。

だから、加点評価で

実現できたときに生みだせる価値を評価してもらえるように

新しい価値の啓蒙活動に励んだ。

このMUJINにいち早く目を付け、ポテンシャルを信じて

可能性に賭けたのが、アスクルだった。

アスクルは、2014年にMUJINとの接点を持ち、

物流センターへのロボット導入を目的として

2016年から業務提携を結んでいる。

これは、通販ビジネスの要と言える物流機能において

業界大手が、創業間もないベンチャーと手を組んだことを意味している。

アスクルでは、ピッキング(倉庫での荷物のピックアップ作業)の

ロボットによる自動化を目指していた。

協業先を探したが、「いまの技術では無理だ」と100社以上に断られた末、

検索でたまたまヒットしたMUJIN社にアプローチした。

2014年時点では、MUJINはまだ創業3年目で

社員は10名程度、もともとコンビニだった場所を

オフィスに改装して利用しているような、駆け出しの状態だった。

さらに、MUJINはプロダクトの現物を持っていない。

その状況下で、

「私たちの技術で、いずれこういうことができるはず」と説明をした。

MUJINに足を運んだアスクルの社長と物流担当者は

MUJINのヒト、技術、ビジョンを加点で評価し、

可能性を見込んで、協業を決めた。

その後、MUJINは、日産自動車やホンダ、日立、キヤノンなど

名だたる大企業との取引を実現させることに成功していく。

2017年には、中国のネット通販大手である京東商城の

中国の大型物流倉庫にロボット・ソリューションを納入し、

倉庫の完全自動化を実現させ、世界中から注目を集めることになる。

躍進を続けるMUJINは、社員の7割をエンジニア、

5割を外国人が構成し、

ロボット・ベンチャーとして

これからの世界の社会インフラをつくることを目指している。

日本に数少ないボーン・グローバル企業として

更なる飛躍が待たれる存在である。

ここでは、「アスクル=イチロー」、「MUJIN=大谷」と見ることができる。

アスクルは、相手のポテンシャルを見抜き、可能性に賭けて、相手を信じた。

素晴らしい「目利き」力だと思う。

MUJINは、自分がやってきたこと、ポテンシャルを信じて、

売り込み、励み、プラン(理想)を実現させた。

0から始まるベンチャーは、自分のポテンシャルを信じなければ、始まらない。

0から始まる人材(ビジネスパーソン・学生)も

自分のポテンシャルを信じて

可能性を広げる努力をしてみなければ、変わることはできない。

一方で、既に地位や実力を備えている側(例えば大企業)は、

まだ小粒なベンチャーや人材のポテンシャルを見抜き、信じて

可能性に賭ける「目利き」力と「度胸」を持たなければ

次のグロース(成長)を創りだすことは難しくなる。

結局のところ

誰しもが、自分と相手の可能性、ポテンシャルを信じて

チャレンジを続けていくによってのみ

次の理想を叶えていくことができるようになる。

楽ではないが、苦しくも、楽しい道のりである。

その挑戦の道のりの、過酷さと偉大さ、そして面白さを

イチローのこれまでのキャリアと、大谷のこれからのキャリアを見ながら

自分自身にもすこし当てはめて、トライ&エラーを続けていってみたいと思う。

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