ニーズで考えれば、手段は無限大

マーケティング小話

「餅(もち)は餅屋」とは限らない。

トイレの匂い担当は、消臭剤だけの役目ではない。

トイレの匂いが気になったら、どうするか。

多くが思いつくのは、トイレに置く消臭ポットだろう。

吹き付ける消臭スプレーも、多いかもしれない。

しかし、「トイレを清潔に、香りの良い状態に保ちたい」

というニーズを満たす手段は、まだまだほかにもある。

トイレの表面に汚れが付きにくくなるトイレ洗剤も選択肢にあがってくる。

トイレットペーパーそのものに香りをつけた商品もアリだ。

更には、トイレットペーパーの芯に香りをつけておくことで、

紙を回すたびに香りが広がる工夫をほどこした商品まである。

大王製紙の「エリエール消臭+」

これには、「なるほど…その手があったか」と唸った。

あるいは、男性ならば、「座ってトイレ」という習慣をアナウンスするだけでも

トイレの清潔さは格段に改善されるかもしれない。

「トイレの匂い」と具体的にジャンル分けすれば、解決策は消臭剤だけだが

「トイレを清潔に、香りの良い状態に保ちたい」

という抽象化したニーズに置き換えると、解決策はグッと広がる。

食卓の場合はどうだろう。

食卓をきれいにする役目となると、パッと思いつくのは

花王の「食卓クイックル」だ。

からぶき・水ぶきだけでは落ちない油汚れをはがして

殺菌して、テーブルを清潔にしてくれる。

スプレータイプと、布巾タイプがあって、とても重宝している。

だが、「食事をするテーブルを清潔に保ちたい」というニーズには

まったく別の解決手段がある。

中国の友人宅で食事をしたとき

おもむろに薄くて赤いビニールの膜(まく)のようなものをテーブルに引き始めた。

そして、そのビニール膜の上で、好き放題に汚して食べるのである。

シャコや上海ガニの殻は無造作に皿の外のテーブル上に置かれ、

液体系もかなりこぼし放題だった。

そして、食事が終わると、テーブルからビニール膜をはがして捨てるのだ。

これで、もう元通り。きれいなテーブルに戻る。

シンプルで、安上がりで、「なるほど」と感心した。

優れたアイデアや商品は、目にしたときに

「なんでコレが今まで存在しなかったんだ…」と逆に不思議になる感覚に陥る。

それほど、納得感が高く、普遍的とも言える価値に気づく瞬間である。

「トイレットペーパーの芯で消臭」と「赤くて薄いビニール膜」は、まさにそれだった。

物事のジャンルにこだわりすぎず、

狭く狭く、マーケティング・マイオピア(近視眼)になってしまうのではなく、

物事を「抽象化したニーズ」で考えられると

視野が格段に広がり、ニーズを満たすいろいろな手段が見えてくる。

ニーズで考えれば、手段は無限大…大げさに言えば、そういうことになる。

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