なぜ「働きたい」と思えるのか

中国よもやま話

中国のEC市場を支配する巨人、アリババの本社は

眠ることのない「杭州の不夜城」と言われる。

基本となる勤務時間は

9時始業・18時終業で昼休憩1時間の8時間労働だが、

18時に帰宅する社員はほとんどいない。

20時になると帰宅するヒトがぽつぽつと出始め、

22時がスタンダードな帰宅時刻になっている。

25時、夜中の1時に帰宅するときには、しっかりと残業をした感覚を持つという。

そして、プロジェクトの立ち上げ時や、繁忙期には

徹夜をして2日連続勤務で、翌日の18時に帰宅するケースも一般的である。

ただし、アリババに残業の強制はない。

また、日本人と違って

中国人には「周りに遠慮して、上司や同僚が帰らないから、私も帰れない」

などという感覚は皆無だ。

アリババの社員たちは、自主的に、貪欲に残業をしているのである。

アリババが不夜城となっている理由は、4つ。

1つめには、社内に多数存在する億万長者たちの存在がある。

アリババは完全成果主義であり、

大プロジェクトを成功させたヒトには

特別ボーナスや自社株などの破格のインセンティブが支給される。

役員だけでなく、現場レベルの社員の中にも

成果を上げてチャイニーズ・ドリームを掴んだヒトが大勢いる。

社員はその事実を知っているから

自身も成功を勝ち取るために、高いモチベーションを備えている。

2つめは、成果を出せなければ、すぐさま淘汰されてしまうため

常に危機感を持っている点である。

成果を出せなかった場合には、どんどんと仕事も給料を失っていく。

アリババでは、3日間学ばないともう仕事はなくなる、と言われるほどに

成長至上主義が浸透している。

3つめの理由は、残業代の制限がない点である。

特に若い社員は、給与を増やすために残業を増やす傾向にある。

しかし、形だけの残業をしていても

年に数回ある業績評価面接で審査され、

成果があがっていなければ報酬は下げられてしまう。

だから、社員たちの成長に対するモチベーションは高い。

勉強をしたいと思えば、家で独学するのではなく

会社に残って周囲の同僚と学習セミナーを開催し、

残業代を獲得しながらスキルアップをしていく。

そうして、効率的なスキルアップと

横のつながりを広げるネットワーク構築が進んでいき、

仕事の生産性向上を導く好循環が生まれている。

そして、4つめには、創業者であるジャック・マー氏の強烈な求心力がある。

大学の英語教員から

わずか20年でアリババという巨大帝国をつくりあげた同氏は

創業から100年後の2099年までに

全ての理想を実現し、中国社会を世界で一番の理想的な社会に創り変える

と宣言している。

その信念を信じる社員たちにとって

アリババで働くことは、「仕事」以上の価値を持つ、

「理想の実現への挑戦」であり、

だからこそ尋常ならざる情熱を注ぐことができている。

実力主義

競争環境

金銭面における強い自己実現欲求と、それが叶えられる環境

そして社会的な理想実現欲求。

「働きたい」と心底思える源泉として

大きな欲を持つことは、大切だと思っている。

「もっと稼ぎたい」「もっと認められたい」「もっと価値を生みだしたい」

カネを稼ぎたい、と願うことは

いやらしくも、汚くも、ない。

メジャーリーグでの挑戦に成功した上原浩治の言葉を借りれば

「もちろんカネは欲しいよ。でもそれだけじゃなくて

 カネは評価の証だから。

 その金額だけ、自分を評価してくれているっていう」

カネにプラス、「価値」も働くエンジンになってくれる。

自分にとっての価値(やりがい)、と

相手・企業・社会といった「誰か」にとっての価値。

働くために、働き続けるために、

「カネ」と「価値」は、どちらも欠かすことができないはずだ。

(「カネじゃない」と簡単に言えるヒトは

 稼いだことがない(稼げない)言い訳か、

 外資・商社・不動産・ベンチャーで稼いだ後で余裕があるか、

 そのどちらかではないだろうか)

アリババは、中国ベンチャーは、

「欲」の重要性をよく認識している。

そして、「欲」を隠さない。

貪欲に働き、革新を生み出し、競争に勝つために、

社員の「欲」を利用している。

だから強い。

欲深く、ありたい。

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