マイクロソフトが教えてくれる

マーケティング小話

2019年8月4日時点、

世界最大の時価総額を誇るのは

マイクロソフト社だ。

昨年、マイクロソフトはGAFAから8年ぶりに世界トップの座を奪還した。

1975年に創業されたマイクロソフトは

パソコン全盛の時代に

OS「Windows」と

ビジネス用ソフト「Microsoft Office」によって

支配的なシェアを獲得し、世界のトップを掴んだ。

しかし、ガジェットの主流が

パソコンからスマートフォンに移行するにつれて、

メガ・ベンチャーのGAFAに次々と追い抜かれていった。

検索はグーグル

スマートフォン機体はアップル

スマホOSはグーグルとアップル

クラウドではアマゾン

SNSはフェイスブック

がそれぞれ覇者となり、

マイクロソフトは「スマホ時代に乗り遅れた過去の王者」と言われるようになっていた。

(と言っても、世界のトップ10にはいたのだが)

GAFAに対抗するために

マイクロソフトは

自社のミッション、カルチャー、

そしてビジネスモデルに大改革をもたらすことを決意する。

2014年、

3代目のCEOに就任したサティア・ナデラ氏は

売上高10兆円、社員12万人の巨大企業を

ドラスティックに作り替えていった。

インド出身の同氏は、21歳で渡米し、

1992年にマイクロソフトへ入社して以来、

20年以上にわたってマイクロソフト一筋で

自社を知り尽くした人物だった。

ミッションは、

かつての「すべてのデスクと、すべての家庭に1台のコンピュータを」から

「Empower every person and every organization on the planet to achieve more.」

(地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする)

へと作り替えた。

このミッション・ステートメントを、上層部から現場まで

全社員に浸透させ、ヒトと組織のマインドを一新させていった。

そして

成長しよう!リスクを取ろう!と呼びかける

「グロース・マインドセット」

mobile、cloudの領域に挑戦者として挑んでいく

「モバイルファースト、クラウドファースト」

この2つの単語を社内で多用し、保守的な大企業の体質を改革していった。

さらには

こうしたミッションとカルチャーの変化を

具体的にビジネスモデルへ落とし込んでいく。

クラウドファーストを進めるため、

売り切り型のソフト「Microsoft Office」から

継続的な課金で収益を稼ぐサブスクリプション型の「Office 365」へと移行していった。

企業向けのITシステムも、クラウドサービス「Azure」へと切り替えた。

さらに、次の成長に対する期待値の大きさも、株価を上昇させる要因となった。

そのひとつが、

AR(Augmented Reality/拡張現実)と

VR(Virtual Reality/仮想現実)を組み合わせた

MR(Mixed Reality/複合現実)の専用デバイス

「HoloLens(ホロレンズ)」である。

ゴーグル状のホロレンズを頭にセットすることで、

現実世界の視界の中に、3D映像が浮かび上がり、

視線、音声、ジェスチャーで操作することができ、

複数人での同時体験や、自身の視界の共有も可能となっている。

2016年から発売を開始し、

医療現場でのトレーニングや建設・自動車における

開発・設計・発表、作業の遠隔指示など、

B2B市場においてはすでにリーダーのポジションを掴んでおり、

B2C市場への拡大も期待されている。

このMR事業も、リスクを取り、次の成長に向けて果敢にチャレンジをする

という企業文化の改革を反映したビジネスになっている。

この事例から、

既存企業の革新を誘発させる存在としての

ベンチャー企業の重要性が浮かび上がってくる。

マイクロソフトは、GAFAが出てこなければ、

GAFAに追い抜かれなければ、

ここまでリスクの大きな革新に踏み切ることはできなかっただろう。

ライバルがいなければ、

リスクを取ってでも、

いま以上の成長を求める決断をすることは難しい。

GAFAを筆頭とするメガベンチャー群・ユニコーン群は

もちろんイノベーションを生み出す企業として重要な存在だが

プラスアルファ、他社のイノベーションを誘発する存在としても

とてつもなく大きな価値を持つ存在なのである。

では、日本を振り返ってみてほしい。

大企業のイノベーションを誘発させるような、

凄まじい勢いで成長・飛躍を遂げていっている「ベンチャー企業」はいるだろうか。

ほとんどいないはずだ。

日本経済の主要なプレーヤー(企業)は、

ここ30年間ほとんど入れ替わっていない。

日本の(自称)ベンチャー企業は、

「Get Big, Fast」を志していない

実質的には中小企業であるケースが圧倒的に多い。

日本のベンチャー・ブームは、中小企業ブームにすぎない。

だから、

「日本からベンチャー企業が生まれない」

という事実は

二重の意味で、

「日本からイノベーションが生まれない」

の原因になっている。

(本当の)ベンチャーは、

イノベーション創出主体としても、

他社イノベーション誘発刺激としても、

極めて重要な存在なのである。

C