ブランドか、中身か

マーケティング小話

花王の「NIVEA」、山崎製パンの「OREO」、森永製菓の「ウィダーインゼリー」

3つの商品の共通点は、自社(単独)ブランドではない(なかった)ことだ。

1つずつ見ていくと、まず「ウィダーインゼリー」は

森永製菓が、アメリカのWeider Global Nutrion社と1983年に業務提携し

同社のWeider(ウィダー)ブランドを冠に付けたゼリー飲料として

1994年から発売しているプロダクトだ。

(Weider社は、ボディビルダーが創業した会社で、プロテインなど、

 ボディビルディングに関わる商品の製造販売を手掛ける)

森永製菓は、デザイン変更で少しずつ「Weider」の存在感を隠すように小さくしていき

明確に、戦略的に、「in」の文字を前面に押し出していった。

2018年3月の出荷分から、「Weider」を外して

「森永」単独ブランドとして「インゼリー」という商品名に変更している。

2030年に切れるWeider社との提携関係を見据えたためか、

Weider社へ支払うライセンス料をなくすためか、

もはやWeider社との提携に価値を見出せなくなったためか、

いずれにせよ

したたかな戦略の狙い通り、多くの消費者に

「ウィダーインゼリー」➡「インゼリー」の変更は、影響を与えていない。

(そもそも、気づかれていないし)売上も堅調だ。

つぎに、「OREO」を見てみよう。

山崎製パンが発売していた「OREO(オレオ)」や「RITZ(リッツ)」は、

アメリカのMondelēz International社とライセンス契約し

1970年から2016年11月まで生産・販売されていた。

(Mondelēz International社は、ネスレ、ペプシコにつづく世界3位の食品会社)

Mondelēz社の方針変更で、生産・販売委託を解消し、

下請け生産のみに切り替える旨を伝えられた山崎製パンは、これを断固拒否。

その結果、山崎製パンは、「OREO」「RITZ」の販売を終了し、

自前の類似商品を展開することで、真っ向からの対立姿勢を取った形となっている。

「OREO」➡「ノアール」

「RITZ」➡「ルヴァン プライムスナック」

この変化は明らかで、事情を知らない消費者サイドからすれば

OREOをマネした商品が出てきたと認識されていることは間違いないだろう。

3つめは、「NIVEA(ニベア)」だ。

こちらは、上2つとちがって、現在進行形で発売されている。

提携関係を持つ花王とBeiersdorf AG社の関係も良好だ。

「NIVEA」は、花王が

ドイツの化粧品会社であるBeiersdorf AG社と

1968年にニベア花王社を設立し、日本での販売・マーケティングを担当している。

(Beiersdorf AG社は、世界に150以上の関連会社を持っている)

1911年にドイツで誕生した「NIVEA」は、

特徴的な青い缶、青いパッケージのスキンケア商品として

世界中、どこに行っても、まず店頭に並んでいるグローバル・プロダクトだ。

「8×4(エイト・フォー)」も同様の経緯を持つプロダクトとなる。

圧倒的な信頼を持ち、男性も女性も、子供からシニアまで、

家族みんなで使えるマス的なブランドとして、「NIVEA」は定番商品であり続けている。

個人的には

「インゼリー」は、「ウィダー」が外れたことに気づいてすらいなかった。

そもそも、Weider社の存在も認知できていなかった。

だから、「インゼリー」となったことに何の抵抗も感じない。

一方、「OREO」は、明確に違いを認識している。

そして、やはり、どこか、オレオが本物で

新しい「ノアール」は偽物な感覚を持ってしまっている。

ブランドの認識は、味という知覚的評価に影響を及ぼすことが証明されている。

だからこそ、実際の味には大差がなくとも、「OREO > ノアール」という感覚は少なからずある。

(それは、多くのヒトにとって「コカ・コーラ > ペプシ」であるのと同様)

こうした「ブランドか中身か」の問題は、

「NIVEA」でより顕著に表れてくる。

もしも花王がBeiersdorf AG社と決裂して「NIVEA」ブランドを使えなくなったら

たとえ類似商品を出したとしても、売上が劇的に下がることは間違いない。

特に、スキンケアという信頼性を求められるジャンルであり、

「NIVEA」という強力なグローバル・ブランドのパワーは

ウィダーやオレオの比ではない。

もちろん、この影響力は、個人個人、ヒトによって異なる。

「ブランドか中身か」の境界線は、個々人の認識・価値観で左右される。

ブランドのパワー、価値、いわゆる「ブランド・エクイティ」の重要性は

ブランドの価値・信頼力が

製品そのものの機能や水準を補ったり、

ライバル商品との実力差をひっくり返したりできるほどに

消費者の知覚に働きかけられる点にある。

消費者の評価は、絶対値ではなく、相対値であり

感覚的なもので、いかようにも変えられる。

「良いもの」「優れているもの」だったら、売れる・伝わる、とは限らない。

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