ブランドが気になってしまう病

マーケティング小話

今年の全仏は、上位4シードが揃ってベスト4に残る展開に。

素晴らしい準決勝…と思っているうちに、速攻で、やはりナダルが決勝進出。

クレーのうえに暴風のコンディションでは、フェデラーにとっては不利すぎただろう。

こんなスポーツの場面でも、どうしても気になるのが

各選手がスポンサー契約しているウェア・ブランドだ。

2019年現在、フェデラーはユニクロ(10年300億円)、ナダルはナイキ、

ジョコビッチはラコステ、ティエムはアディダス、と見事に4人ばらばらになった。

テニスの本場である欧州における、ユニクロのブランドイメージ・アップは

フェデラー効果ですごいことになってるんじゃないだろうか、とか

ジョコビッチが全仏優勝をかましたら、ラコステは最高の広告戦略になるな、とか

(ラコステは、元テニス選手のルネ・ラコステが創ったフランスのブランド)

ナイキはスター選手、アディダスは若手注目株、と棲み分けてるなぁ、とか

(ナイキが上位のスター軍団を押さえるから、アディダスは次世代を押さえるしかない)

しかしチチパス、ズべレフ、ティエムのアディダス3人衆が天下を取ったら

ナイキとアディダスの力関係は逆転してしまうな、とか

(近い未来に、この逆転はかなりの高確率で実現するだろう)

テニスを見ながら、いろんな雑念が入り込んでくる。

映画を観ているときは、なおのこと困る。

プロダクト・プレイスメントの戦略が気になって集中できなくなってしまうからだ。

アイアンマンは、当然のごとく常にアウディだが

「おいおい、アベンジャーズ・エンドゲームでもアウディかい」と

キャップ→トニー、そしてトニー→キャップと会いに行く場面でツッコんでしまった。

特に、キャップは、これまでシボレーやハーレーといった

THE・アメリカのブランドに乗り続けてきていたので、

「ついにキャプテン・アメリカがドイツ車に…」と感慨深かった。

日本人として注目すべきは、黒人ヒーローのブラックパンサーが

トヨタのレクサスとともにアクションを繰り広げていたことだ。

ここでは2つの推測をすることができる。

ひとつは、トヨタおよびレクサスは、ハリウッド・MCUのファンのなかで

アイアンマン=アウディと同じくらい特別なブランドとして認知されたであろう点だ。

ブラックパンサー=レクサス

ブラックパンサーは、ヒーロー単独の作品としては、

アイアンマンの興行収入を上回っている超メガヒット作だ。

黒人のスポーツ選手の多くが、試合で勝った後にはブラックパンサーのポーズを真似ていた。

アカデミー賞の作品賞にノミネートされたほどの、エポック・メイキングな作品である。

(女性ヒーローの代名詞が、ワンダー・ウーマン=ガル・ガドットになったのと

同じく、あるいはそれ以上に、黒人ヒーローの代名詞は、

ブラックパンサー=チャドウィック・ボーズマンになっている)

つまり、黒人のなかでトヨタとレクサスのブランドイメージは跳ね上がっているはずである。

相当に、ユーザーが増えていっているだろう。

ただし、逆に言えば、未だ根強い人種差別論者の白人ユーザーは、

離れていっている可能性が、低くない。

もう1つは、なぜブラックパンサーという超優良コンテンツのプロダクト・プレイスメントを

レクサスが勝ち取れたのか、という見方だ。

以前にレクサスのブランド・マネジメント担当の方と話す機会があったが

ハリウッド大作のプロダクト・プレイスメントには、最低1億円が必要で

なかなか手が出せない、とこぼしていた。

では、なぜブラックパンサーを獲得できたのか。

プロダクト・プレイスメントに割ける広告費用が大幅に増えたのか。

そうではなく、私見では、他の欧米ブランドが断ったためだと推測する。

メルセデス・ベンツ、BMW、あるいは他のブランドは

黒人イメージがブランドに定着することを避けたのではないだろうか。

だからこそレクサスが、安価でプロダクト・プレイスメントできたのではないか。

日本や中国では、正直に言って「人種」を意識したことは1度もないが

(「国籍」は多少あったとしても)

仕事で欧米に行ったときには、この「人種」の根深さに驚く。

ブランド戦略、ブランド・イメージ、あるいは

オピニオンリーダーやインフルエンサーといったマーケティングの話をしようとすれば

欧米では、どうしても「人種」は避けて通れない。

極めてデリケートで、リスキーな領域になっている。

そう考えると、黒と白のどちらの人種でもない日本の

そして世界的ブランドであるトヨタの、最高級車種レクサスというのは

適材適所だったのかもしれない。

こんな雑念が、映画鑑賞に付きまとってくる。

ほとんど職業病である。

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